恋愛 | 文字数: 738 | コメント: 0

SEX

 抱いた女がシャワーを浴びている。
 名前は確か、サオリだったか、シオリだったか。まあ、そんなのはどうでもいい。
 俺は今、パンツだけを穿き、テレビを見ている。今日の東京は晴れるらしい。
 昨夜、駅前で暇そうにスマホを眺めている女がいたから、いつものように声をかけ、持ち前のトークで訝しがっていた女を笑わせたあと、食事に誘い、そのままここへ来た。
 SEXしているときは「可愛いよ」「綺麗だ」「愛している」と何度も言っていたが、そんな言葉はその場限りの言葉にしか過ぎず、事を終えてしまえば、どんな顔だったか、いまいち覚えていないのも事実。
 女がシャワーを浴び終え、服を着て、出て来た。
 さっ、シャワーを浴びてくるか。

 つまらないSEXだった。
 シャワーを浴びながら思い返してみても、何も頭には残っていなかった。抱かれた男の顔も曖昧。
 昨日、友達から合コンがバラしになったとLINEが届き、駅前で時間を潰していると声をかけられた。名前を言われたと思うが、全くもって思い出せない。
 つまらない話をする男のSEXは大抵つまらない。
 男の話に苦笑いを浮かべながらも、暇だったから誘いに乗って、食事を奢ってもらい、ホテルに来た。
 演技で喘いでいると、幸福感よりも疲労感が溜まる一方。
 シャワーをとっとと済ませ、早く帰ろう。

 シャワーを終わらせ、部屋を出た。
 女はもう支度を済ませたらしい。
 ホテルの前で女と別れる。
 そして今日も、夜のオカズを求め、駅前で女を物色する。いつものことだ。

 なんの印象も残らなかった男と別れる。
 そして今日も、幻想である赤い糸で繋がれた男を求め、合コンへ行く。いつものこと。

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