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夢老い人

あなたに与えた箱は確かに
開けた途端、
あなたを老人に変えてしまう
とても危険なものでしたが、
まさか開けてしまうなんて、
あなたが箱を開けないよう
あれほど何度も言って聞かせ、
蓋を貝よりも硬く閉じたのに、
まさか開けてしまうなんて、
こんなことなら
あなたを水の上に帰すのではなかった
と悔やんでももう遅い。
けれど、あなたが故郷を語るときの声を聞いていたら、
到底この寂しい水底にとどめ置くことなどできなくて、
だけどあなたを帰すためには
この城で過ごしたその時間ごと
水の上に帰さなければならなくて、
せめて困ることのないよう
時間と老いを箱に閉じ込めておいたのに、
まさか開けてしまうだなんて。
いっそ私も水の上に出て
あなたと一緒に綻びていければと思うのに
亀が外に出してくれないので、
そもそもお前がいじめられたのが悪いのだと言いながら
亀の甲羅を叩いています。

お慕わしいです、浦島様。

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