旧同タイトル | イベント: 同タイトル | 2017年4月 | 文字数: 428 | コメント: 0

夢老い人

あなたに与えた箱は確かに 開けた途端、 あなたを老人に変えてしまう とても危険なものでしたが、 まさか開けてしまうなんて、 あなたが箱を開けないよう あれほど何度も言って聞かせ、 蓋を貝よりも硬く閉じたのに、 まさか開けてしまうなんて、 こんなことなら あなたを水の上に帰すのではなかった と悔やんでももう遅い。 けれど、あなたが故郷を語るときの声を聞いていたら、 到底この寂しい水底にとどめ置くことなどできなくて、 だけどあなたを帰すためには この城で過ごしたその時間ごと 水の上に帰さなければならなくて、 せめて困ることのないよう 時間と老いを箱に閉じ込めておいたのに、 まさか開けてしまうだなんて。 いっそ私も水の上に出て あなたと一緒に綻びていければと思うのに 亀が外に出してくれないので、 そもそもお前がいじめられたのが悪いのだと言いながら 亀の甲羅を叩いています。 お慕わしいです、浦島様。

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