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Chapter2 仲間③

 「ぐふぁっ…!」
 「こいつ…!何なんだよ…!」
 敵は既に血まみれだ。
 今回これくらいでいいかな?
 「今なら瀕死で許してあげる。これ以上私に斬られる前に、ここから去った方がいいんじゃない?」
 「…くそが…!」
 敵はゆっくりと立ち上がり、足を引き摺りながら去っていった。

 「あいつら…、何だったんだろう…。」
 「さあ…。でも、どこかの団体だと思う。」
 「え?どうしてそう思うの?」


 「さっき戦ってた時、胸にバッジが付いてたんだ。」

 そう、さっきの奴らはきっとどこかの団体だ。
 気になる所だが、とりあえずそれは後回し。
 今は大屋の居場所を突き止める所からだ。



 「うーん…、特にこれといった証拠はないね。」
 街中を歩き回っても、大屋が残した証拠の欠片もまだ何もない。

 「…!待って、裏路地に何かある。」
 「え?」
 私は、近くの裏路地に何か赤黒いものがあるのに気付いた。


 「これ…、血痕?」
 「…だね。痕の感じからして、既に時間が経ってる。」
 アスファルトに、赤黒く染まった血痕が残されていた。
 これはもしや大屋に関係されるものだと思う。
 でも、死体がどこにもない。
 恐らく凶器で出血させた後、その死体を別の場所に持ち去っていったと考えられる。
 「派手にやってるなぁ…。」
 「彼女を放っておいたらまずい。早くこの場所を安定させないと。
 大屋は、他にも人を殺してる。下手したら何十人もかも。」
 「そんな…。」
 (…何故大屋は人を殺すようになったのか?でも今は答えが見つかりそうにない。
 それがわかるものがこの先にあればいいんだけど、あまり安易なものではない事は確かだ。)
 「…とりあえず、大屋と繋ぐものがわかればそれでいい。
 若葉も協力してくれるよね?」
 「当たり前でしょ?この街自体が危ないもん。
 そのままの状態で暮らすなんて、考えたくもない。」
 「…だね。」
 若葉も、覚悟はできてるみたい。
 そうと決まれば、早いとここの事件を終わらせないと。



 「よお!松浦ぁ!!」
 「ん?…!」
 私は証拠探しに街を歩き回ってた途端、いきなり声をかけられた。
 その方向は…。


 上からだ。
 「あんたを探してたぜ。やっと見つけた。」
 声の主は、昨日私とやり合ったタンクトップ青年だった。
 やっと見つけたって事は…、これはもしやだけど…。

 「何か用?」
 「決まってんだろ?あんたにリベンジしに来たんだ!
 俺ぁあんたに勝つために何時間も特訓したんだ!今度こそあんたをぶちのめしてやる!!」
 正直に言っていい?


 面倒。

 でもやらないとしつこく付きまとうだろうな…。


 「…仕方ないなぁ…。もう今回だけだよ?」
 「そうこなくっちゃな!!」
 まったく、何でこんな時に…。
 まあ、彼がやりたい事だったら別にいいけど。
 「若葉、少しだけ待っててくれる?」
 「う、うん…。」


 「さあ、始めようか。

 覚悟しろ!松浦あぁ!!」

 二度目の戦いが始まる。
 鞘付きの鬼薙刀を構え、前へと踏み出したーーー。



 「ぐぅ…!」
 「はぁ…、はぁ…。」
 彼は、昨日より上達していた。
 でも、私は息を切らせながらも、勝利を掴む事は出来た。
 「畜生…!二度も負けるなんて…!
 あんた…、まさか、凄腕なのか?」
 「そんな所までではないけど…。」
 「くそ!なのに何で俺が負けるんだよ!
 あれだけ特訓してもあんたに勝てないなんて…、はぁ…。」
 私に勝てない事に悔しがる彼。
 すると、彼は座る体勢を整えた。

 「…なあ、あんた。」
 「ん?」

 「…あんたは、何で刀なんてやってるんだ?」
 いきなり、彼から問いかけられた。
 私が刀を持つ理由…。一つだけならある。


 「私はね、両親が殺されて、その仇を討つために刀を持ってるの。
 この刀は、その両親から伝授された。強くなるために。
 …あの頃は何もできなかった。ただ隠れて、親の死を迎えるだけでいた。
 その誰かさんへの恨みを晴らすため。それが、私が刀を持つ理由なんだ。」
 「……。」
 そう語ると彼は、深刻な顔をして黙り込んだ。
 でもその後すぐに微笑む。

 「…そうかい。
 あんたは…、両親のために刀を振る舞う訳かい。
 俺もその気持ちはよくわかる。俺も…、家族を失った身だからな…。」
 どうやら、私の事をわかってくれたみたい。
 「ふぅ…、それにしても、何度挑んでもあんたに勝てないって事はわかった。
 そんだけ気持ち強いもんな。あんたは…。」
 なんだかお互いの気持ちが晴れて、快い気分になった。

 「…そういう訳で…、俺ぁ決めたわ!」
 「…?決めた?」
 私は彼の発言に、キョトンとした。
 すると、土下座をし始めた。



 「「松浦の姉貴」!」



 「…は?」
 「どうかこの俺に、「姉貴」と呼ばせてくれ!!」



 ……。



 え?


 は?



 「え、ちょっと待っ……。」
 「いや、待てねえ!俺、姉貴の実力が身に染みたんだ!
 あんたん所で修行させてくれ!弟子にしてくれ!姉貴!!」
 突然彼に、「姉貴」と呼ばれてしまった。
 若葉から「お姉ちゃん」と呼ばれるのは慣れっこだけど、「姉貴」は流石に…。
 「ちょっと、恥ずかしいよ…///」
 「姉貴!目ぇ逸らさないでくれ!見捨てないでくれぇ!!
 俺、あんたとチーム組みたいんだ!
 あ、別に強制って訳じゃねえ!ただ、姉貴って呼ばせてもらうだけでも構わねえ!!
 頼む!姉貴!!」
 「うぅ…///」
 もう逃げたい、立ち去りたい…。
 姉貴って呼ばれるだけで顔が熱くなる…。
 「お姉ちゃん、ここは賛同してもいいんじゃない?多分そうしないと行かせてもらえないと思うし。」
 「えぇ…。」
 若葉…、そこは止めてよ…。
 お姉ちゃんもう恥ずかしくて耐えられないよ…///
 でももう、そうするしかないか…。


 「勝手にして…///」
 「…!姉貴ーーーーー!!」

 恥ずかしさのあまり、私ほそっぽ向いた。



 こうして、私の元にもう一人、仲間ができたのだったーーー。

~Chapter2 仲間 END~

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