Chapter3 暗夜③
ザシュッ! 「うぐっ…!」 なかなか手強い敵だった。 なんとか撃たれずに済んだけど、油断したらひとたまりもない。 「銃使いのアサシン」って所かな。 「へぇ…、なかなかやるじゃねえか…。大屋の言っていた通りだな。」 「大屋から聞いて勝負を仕掛けてきたの?」 「…それ以外何だってんだ。 今まで一人残らずバンバン撃ってた俺が、まさか負けるとはな…。」 「…そう言って、私を殺すまで終わらないんでしょ?」 多分大屋との勝負を終えるまで、こいつらもいずれ私に挑み続けると思う。 まあ、あくまで私の勘だけどね。 「なんだ、もうわかってんじゃねえか。ま、予想されなくてもそのつもりだったんだがな。」 「……。」 「今回は見逃してやる。でも次は、今回のように行くとは思うなよ。」 黒沼はそう告げて、瀕死状態の手下達を連れて退散した。 死んだ手下は置いて行ったけど、もう用無しって事かな? 「なんかさ、初めて姉貴とこうやって手ぇ組んだ気がするな。」 「…今更?」 「さっきは雑魚相手だったが、あんな大物相手は初めてだよ。」 「まあ、言われてみればそうだね。」 「それにしても…、また1人敵が増えちゃったね…。 お姉ちゃん、どうする?」 若葉からそう質問された。 そんなの決まってる。答えはただ一つ。 「もういっその事、黒沼も始末するしか方法はないね。」 「…姉貴ならそう言うと思ってたよ。」 「何その最初から知ってたみたいな感じ。」 「へへっ、俺はなかなか姉貴の事知ってるだろ?」 「うん、意味わかんない。」 そんなくだらない会話中、若葉が割り込んできた。 「…今日はもう遅いから、明日また探しに行こうよ。 私、今日はもう疲れちゃった…。」 若葉の言う通り、もう日は暮れている。 安定したと思い込んだ人達が次々と歩いているのがわかる。 「そうだね。それじゃあ巣に戻ろっか。」 「姉貴。」 「ん?」 「せっかくだし、どっか飯食いに行かね?」 「は?何でよ。」 「いやー、ちょっとな。でもいいだろ?俺達初の晩餐って事でさ。」 突然涼介から提案された。 そういえば、この3人でご飯食べる事なんてなかったな。 「別にいいけど、どこにするの?」 「それは姉貴が決めてくれ。」 「はあ?言い出しっぺは涼介でしょ…。」 「もし姉貴が苦手なもんあったら困るだろ?選択権は姉貴に譲るよ。」 「まあ別にいいけどさ…。」 まあ、苦手な物は酸っぱい食べ物だけだから、そんなに多くはないけど…。 「ここにしよっか。」 私達が着いたのは、「満天魚介帝国」。 いわゆる回転寿司屋だ。 「ここは…、お寿司屋さん?」 「うん。最近気に入ったんだ。」 「へえ、いいじゃねえか。楽しみだ。」 そう言うと、私達は中に入る。 「それじゃ、松浦軍結成記念として!」 「もう結成からだいぶ時間経ってるけどね。」 「う、うるせえ!とにかく続けるぞ!」 私達が今からやるのは、松浦軍結成記念という事で、乾杯をする事。 …まあ、水だけどね。 「記念として、乾杯!」 それぞれのコップを当てる。 一番早く飲み干したのはやっぱり涼介だった。 「ちょ、早すぎでしょ。」 「戦いの後だからな。ちょっと水取ってくるわ。」 そう言うと涼介は立ち上がり、水を取りに行った。 ここの寿司屋は水を取るのはセルフである。 「お姉ちゃん。」 「ん?」 「今のお姉ちゃん、すごく楽しそうだね。」 「え?そう?」 涼介が水を取りに行っている間、若葉がそう口走った。 まあ、今は楽しいと言ったら楽しいかな。 「涼介君が松浦軍に入った頃からかな。 ずっと一匹狼で生きてきたお姉ちゃんの元に、私を含めて2人も仲間ができたんだから。」 「……。」 言われてみればそうだ。 私は若葉と涼介と出会うまで、ずっと1人だった。 そうなり始めたのは、私が10歳の頃。 助けられる宛もなく、孤独な日々を8年も過ごしていた。 そんな中私はあの下水道に、あの巣を作り始めた。 そこなら安心して過ごせるって…、そう思ったのだけれど…。 「まったく、若葉はお姉ちゃんの何もかもを知ってて怖くなってきたよ。」 「えー?何でよー。」 「でも、若葉がそう言えるのは、それほどお姉ちゃんの事を見てるって事だよね? 若葉はずっと、お姉ちゃんの背中を見てたもの。」 「んー、そうなのかな?」 自覚なしかい。 まあでも…、本当に可愛いなぁ。若葉は。 「さ、お腹空いたでしょ?沢山食べていいよ。」 「うん!」
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