旧祭り | 文字数: 670 | コメント: 0

裸の王様

「陛下! 国王陛下!」 「なんだね、騒々しい! 第3王子ペルシカ!」 「いや、今は父上と呼ばせてもらうよ。父上、あんなインチキ仕立て屋の言うことを信じているわけじゃないでしょう?」 「いや、私は信じているよ」 「おとぎ話の世界ならともかく、この現代で、真に忠誠心のあるものだけに見える布なんてバカバカしいにもほどがある!」 「なに? さては、お前、私に忠誠心が無いな? 皆、美しい布だと言っていたぞ! 新しい技術を信じぬ貴様こそバカ者だ!」 「じゃあ、父上、なんで下着まで全部、同じ素材で作るように命じたんですか?」 「そ、それは……」 「あなたはただ、元号が変わる祝賀パレードで、全国民が見守る中で全裸で歩きたいだけでしょう!」 「そ、そんなことはない……」 「口でそんなことを言っても、全身が生まれたての小鹿のようにプルプル震えているのが何よりの証拠です!」 「こ、これは、貴様が無礼だから、怒りで震えとるんじゃあ」 「言い訳するなら、もう少し捻りが欲しいですね。見え見えです」 「しかし、わしゃあ……」 「とにかくダメです」 ペルシカはピシャリと言い放つと王の間を出て行った。 その後、パレード当日。 「おい! ペルシカ王子がはだ……」 「ペルシカ王子が全裸に見えるものは、忠誠心が無いとみなして牢屋にぶち込むぞ!」 「ははーーーーーーーーーーーーーーー!」 (くそうぅっ! あの役はわしのものだったのに!) 王宮は少しごたついたが、国の平和は末永く続いたという。 (おしまい)

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