恋愛 | 文字数: 739 | コメント: 0

キミと冷蔵庫

「……は?」 「ちょ……」  冷蔵庫を開けたら、彼女が何か言いたげにごろりと転がり出てきた。 「冷えっ冷えだな」 「そりゃ……冷蔵庫にいたんだもん……」 「風呂、入っとくか? 布団がいい?」 「……なんで動揺しないのよあんたは」 「まぁまぁ」 「まぁまぁじゃねぇ」 「……布団」  彼女を抱き上げて布団に運んで、毛布をかけてやる。  こういう時、彼女が小柄で良かったなって思う。  だって、なんか男らしさをアピールしやすいじゃないですか。これは内緒の話なんだけどね。  毛布にくるまった彼女は、ガタガタと歯を鳴らしながら俺をにらんでくる。 「ぜんっぜん驚かない!」 「だってそりゃー、もう慣れてるし」 「しどい!」  この間は土間、この間は押入れ、その前は洗濯機…と来ればあー、次は冷蔵庫かなぁという予想はつく。 「まぁまぁ、サプライズしたい気持ちはありがたく受け取っておくから」 「何よそれ~…あんた何やっても驚かない、つまんない!」 「別にいいんじゃない?」 「よくないよ!」 「いいんだよ」  俺は後ろから彼女を抱っこする。  彼女の肩が小さく跳ねた。俺は気にしないで続ける。 「だって」 「……だって?」 「怖くはないし驚かないけど、可愛いとは思ってるし。そういうとこ」 「~~~~~~っ!」  彼女は俺の方を向いてポカポカ胸を叩いてきた。 「ちくしょー今度は絶対驚かせてやる~!」 「はいはい」 「許さん!」 「可愛い」  噛み合わないけれど楽しい、イマイチ頓珍漢な会話。  幸せだなぁ。  最後にひとつ、ぎゅっと強く彼女を抱きしめて、その日はお開き。  願わくば、こんな日々が続きますように。

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