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リフティング

サッカーボールが宙に舞っていた。そして地に向かって落ちる。落ちる瞬間に膝がサッカーボールを跳ね上げまた宙に舞う。金田里美はサッカーボールでリフティングをしていた。

「リフティング。上手いな」

 坂江圭太はサッカーボールを目で追いながら言った。

「そうでしょ」

 サッカーボールがまた地に向かって落ちるが膝がまた跳ね上げる。
 
「さすがだな」

 圭太は笑う。

「私の腕はさらに上がってるわよ」

 里美はサッカーボールを高く上げてタイミングを合わせて思いっきりとサッカーボールに蹴りを入れ込む。
 サッカーボールは勢いよくゴールポストの網に入る。

「ナイスだな」
「そうでしょ。私のシュート!!」

 里美は圭太にVサインをする。

「そして白かったなあ。お前のパンツ」
「は!!」

 里美は下を見た。制服のスカートが見えた。

「圭太ーーー」

 里美はズカズカと圭太の前まで来て頬をつねった。

「痛いーーー」
「忘れないーーー」
「分かったから頬をつねるのは止めてくれー」

 圭太の哀願に里美はつねるのを止める。

「ラッキースケベできたんだから今日は何か奢りなさいよ」
「はいはい。俺のお小遣いで払える中でな」

 圭太はそのまま歩き始めてゴールポストにあるサッカーボールを手にする。
 里美は圭太がじーとサッカーボールを見てるのを見ていた。
 圭太と里美は小中高と同じ学校で腐れ縁の中である。
 高校の帰り道。いつも通る広場にサッカーボールが転がっていた。なんとなく触っていつの間にか里美はリフティングをしていた。
 
「圭太......」

 里美はゆっくりと圭太の近くに寄った。

「俺はこのサッカーボールに人生をかけようと思ってたんだよな」
「......」

 圭太の言葉に里美は何も答えれなかった。
 二人は小さい頃からサッカーをしていた。男の子の中に里美も混じり朝から晩までサッカーをしていた。小学校も二人はサッカー部に入っていた。
 二人とも上手く双璧と呼ばれた。しかし中学校では圭太は当たり前のようにサッカー部に入ったが女子にはサッカー部はなく仕方なく里美はサッカー部のマネジャーになった。 
 二人は暇さえあれば二人はサッカーをしていた。中学では必然的に噂になったが二人は全然その気はなかった。
 そして高校へ。そこは男子サッカー部と女子サッカー部があり二人は自動的に入部した。
 二人は一年で選手として抜擢され地区大会・県大会と勝ち続けてきた。しかしニ年の時に圭太は試合で足を怪我をしてサッカーが出来なくなった。

「しかし、まあ里美のお蔭でなんとか立ち直れたけどな」

 一時は不登校になったが里美が強引に学校に行かさせていた。

「そりゃあ、圭太が落ち込んでると私は面白くないからね」

 里美は圭太が持っているサッカーボールを取り、またリフティングを始める。そこからだ。二人は自然と付き合い始めたのは。

「なぁ、里美、覚えてるか?」
「なにが?」
「里美はサッカーを続けてくれと」
「覚えてる」

 里美はリフティングを続けながら言う。圭太が学校に再び行く時は条件を言った。【里美はサッカーを続ける事】と

 そして里美は選手として部活の部長までなり引張っている。

「里美は悩んでるだろう」
「うん」 

 サッカーボールが激しく宙に舞う。
 里美には女子サッカーとしての選手としてのオファーが来ていた。しかし里美はそれをすぐに受け入れる事はできなかった。いくらサッカーに自信があるとはいえプロとてやっていく自信まではない。

「悩んでる。でもそれは圭太から見れば贅沢な悩みかな?」
「里美」

 サッカーボールが高く宙に舞った時に里美は圭太に抱かれていた。

「俺のあの時に約束を頑と守れとは言わない。それは里美の人生の選択であり俺はとやかく言える立場ではない。でも、もし里美がサッカーを続けるなら俺は全力でお前を応援する。俺の夢を繋げてくれる為に」
「夢......」

 サッカーを続ける夢。圭太はもうできない。でも。

「私は」

 里美は圭太の近づいてくる顔を見る。まだ迷ってる。でももう少しその悩みも無くなるだろう。里美の耳にサッカーボールが地面に落ちる音が聞こえた。

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