恋愛 | 文字数: 597 | コメント: 0

夏の終わりのさがしもの

三年付き合った彼と別れたのは、コロナウイルスがなかなか終息しないとか、今までに経験したことない大雨が地元を襲ったとか、35度を越える猛暑日が何日も続いたとか、そんな事とは全くもって関係なかった。 けれど、それらのせいにでもしないと、私は永遠に理由を探してしまいそうだった。 「いや、いや、アイツのせいでしょ、浮気してたんだから。しかも浮気相手に本気になっちゃったんだから」 そうだ、浮気されて捨てられたんだ… "やっぱりやり直したいって言ってきても、絶対寄り戻しちゃダメだからね、じゃあね" 一方的に通話を切る友人は、とても忙しいらしい。 でも、日に一度は連絡してくる。 心配してくれているのだ。 「これ、家に残ってた荷物」 「捨ててくれて良かったのに」 勝手に人の物を処分したり出来ない事を分かってて、彼の家に私の物を置いてきた。 考え直してとすがってしまいそうなのは、私の方だ。 「あ、このTシャツ探してたんだ。ありがと」 「そっか、良かった。お前ってさ、いっつも何か探してたよな」 「え…そう、かな…」 "じゃあな" 彼は自分で注文したアイスコーヒーを少し残し、帰って行った。 いつも何か探してる。 確かにそうだ。 彼を好きだった理由。 彼の心が離れてしまった理由。 これから私は、一人で何を見つけられるのだろうか。

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