日常 | 文字数: 374 | コメント: 0

空を見る端末

僕の端末は人間だ。 僕の本体が何であるかは無論僕にはわからない。 ある日誰かが僕に複雑きわまりない機械の写真を見せて、「これが君の本体だよ」と言ったなら、僕はそれを信じるだろう。 僕には疑う理由がないから。 ある日誰かが醜悪な、内蔵のような生物の写真を見せて、「これが君の本体だよ」と言ったなら、僕はそれも信じるだろう。 僕には疑う理由がないから。 ある日誰かが僕に美しい青年の写真を見せて、 「これが君の本体だよ」と言ったなら、僕はそれを信じないだろう。 僕には信じる理由がないから。 そして、何れにせよ、僕の本体について語る人物は現れなかった。 僕の端末は年を経て、劣化の始まる年齢となった。 端末の機能停止でこの世からログアウトする日も、現実的な未来となってきた。 惜しむらくは、僕の本体の非存在を僕が確認できないこと。

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