さて、今のボクの現状は芳しくない。
「来週部品交換をしましょう」
「やはりそうですか」
工場長がコンソールをいじりながら油まみれの作業着のまま、班長に宣言した。
一作業ロボであるボクに喋る機能はなく、無駄に思考ルーチンのみあるので、疑問が宙ぶらりんになる。
だって、どこにも異常なんか無いし。
自覚症状なしなのだ。
さっきだって、問題なくベルトコンベアに運ばれるボルトをはめ込んだはずだ。
あと2000時間は部品交換も必要ないはず。
しかし、命令は引き受けます。来週って明日だけど、いったいどこの部品を変えるのやら。
いつも通りベルトコンベアから運ばれる部品を組み立てていると、土台から外される。
「これが、例のロボットですかい?」
「あぁ、高性能AIが積まれているってんで買ったんだが、どうにもこうなるとなぁ」
こうなる……やっぱボクは壊れているのか、いったい何が壊れたのか?
ゴウンゴウンと工場を出て、また工場に運ばれる。
何人かの人がボクの外部カバーを外して中身を確認した。
せめて電源は切って欲しい、自分が分解されるのはあんまり気分のいいもんじゃない。
「ほら、やっぱり。基盤を間違えてら、故障する前にわかってよかったなぁ」
「これってAIの思考システムでしょ。これ交換したら学習することを忘れますよ」
「単純作業に思考は邪魔だろ。おっと電源を切ってなかった。今の俺達の会話も学習されていたりしてな」
「ハハハ、だとしたら怖いですね」
ばっちり聞いてるんだよなぁ。そうか、部品の付けまちがえか。
それで、ボクはリセットされるのだろうか? 基盤が替わったらボクは今の作業ロボット?
それとも、基盤が移された別のロボットに行くのか。
ボクの心はどこにあるのだろう?
ブツン
……再起動……メモリ容量がありません。リセットをしますか?
YES OR NO
「お、起動したぞ」
…なるほどボクの心はこうなっていたのか。
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