旧祭り
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意識の研究
記憶というものはどうもいい加減のものらしい。
あの時、ああだったでしょと言われると、そんなことは覚えていないのに、
そうだったかと思ってしまう。
卒業式のとき、ばったりおふくろ連れの俺とあったでしょ、といわれても愛には記憶がないのだ。
でも卒業式の日にたしかに啓に会って、何人かでどこかへ行き、愛は啓に今までずっと好きであったことを、
告白したんだ。啓はそんなこと思ってもなかったと言って、取り合ってはくれなかった。
衝撃的だったことだけは覚えている。
でも意識の中では、啓を好きであることは好きなのだけれど、現実性を帯びてなかった。
なんというのだろう、想像できないのだ。
たとえ現実になったとしても、世間知らずで、個性を持たない愛が
あの頃の希望や野心いっぱいの啓と暮らしても、神経を患うだけだったろうと思う。
好きだ好きだと思っていても、一年くらいすれば、人はバカバカしくなっていく。もう違う方向に行こうと
思うもの。愛もお風呂に入って髪を洗ったら、気分が変わった。
その後、愛も普通の結婚ができて、その結婚も山あり谷ありで、笑ったり泣いたりで生きてきた。
そんな中で感じてきたことを、ときには短編小説にでも書いてみようかと思うのだった。
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