わしは短編小説の妖精じゃ!ハッハー!わしを押してみ?
「本当に見たの」と小学6年生だった妹が繰り返した。 「彗星が、狭山湖に向かって落ちていったの」 動画は? と聞くと「撮れなかった」と答えた。「でも見たの」 その日、火球は目撃されていなかったし、狭山湖にクレーターができるなんてこともなかった。 だから僕は信じなかった。父も、母も、隣の家のゆう君さえ信じなかった。 だから、2022年の3月31日に、月の裏側から”兎たち”が彗星に乗ってやってきていたという “事実”は、長い間、人類に知られることがなかった。 その事実がニュースで報道されたとき、すでに老齢の天文学者となっていた妹は、 ふん、と子供のように鼻を鳴らした。「だから言ったじゃない。本当に見たんだって」 そんなこと言われたって、困る。誰だって信じないだろう。君だって信じないはずだ。 3月31日に彗星が落ちたのを見たと、4月1日に言ったのだ。小学6年生の子が。4月1日に。
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