旧同タイトル | イベント: 同タイトル | 2017年4月 | 文字数: 329 | コメント: 0

夢老い人

わたしは、夢追い人だった。 妻をなおざりにして、夢を追いつづけた。 時に、妻を罵倒したこともあった。 なぜ、そんなに夢ばかり追い求めるのか、と侮辱する妻にひどく苛立った。 現実ばかりに囚われる妻を、愚か者だとさえおもった。 夢を追いかけること。 それは、とても誇らしいことだと信じてやまなかった。 けれど、気づいた。 老いて、そして、妻を失ってようやく気づいた。 愚か者は、他でもないわたしだった、と。 理想ばかりを追いかけて、目の前にある最も大切なものをないがしろにしてきた。 なんと憐れで情け無いことよ。 亡き妻よ。 わたしは、なんと詫びれば良いのが分からない。 妻よ。

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