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夢老い人

わたしは、夢追い人だった。

妻をなおざりにして、夢を追いつづけた。

時に、妻を罵倒したこともあった。

なぜ、そんなに夢ばかり追い求めるのか、と侮辱する妻にひどく苛立った。

現実ばかりに囚われる妻を、愚か者だとさえおもった。

夢を追いかけること。

それは、とても誇らしいことだと信じてやまなかった。

けれど、気づいた。

老いて、そして、妻を失ってようやく気づいた。

愚か者は、他でもないわたしだった、と。

理想ばかりを追いかけて、目の前にある最も大切なものをないがしろにしてきた。

なんと憐れで情け無いことよ。

亡き妻よ。

わたしは、なんと詫びれば良いのが分からない。

妻よ。

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